建築模型とは?種類や作る目的についてわかりやすく解説!
「建築模型という言葉は聞いたことがあるけど、どういうものなのかよくわからない」という方もいるでしょう。建築模型とは建物を作るときに、設計図面のイメージをつかみやすく立体にした模型のことです。この記事では建築模型の種類や作る目的についてわかりやすく解説します。
そもそも建築模型とは
建築模型とは、実際の建築図面に基づいて作成された建物の正確な模型のことです。設計士が図面だけではわからない部分を検討したり、施主に説明やプレゼンテーションをしたりするために用いられます。
建物の規模や模型の種類によってさまざまですが、縮尺は50分の1や100分の1で作成されることが多いです。スチレンボードという発泡スチロールでできた板を切り貼りして作るのが一般的とされています。
建築模型の種類
建築模型は用途によって大きく2種類に分類できます。ひとつはプレゼンテーション模型、もうひとつはスタディ模型と呼ばれるものです。それぞれに用いられるシーンが異なり、見た目も違う場合があります。以下で詳しく見ていきましょう。
プレゼンテーション模型
プレゼンテーション模型はその名の通りプレゼンテーションに用いられる模型です。施主であるクライアントに建物の説明をするときに使用します。普段図面を読みなれていない人にも、実際の建物のイメージをわかりやすく伝えられるでしょう。
場合によっては建物の外観だけでなく、内装や庭や周辺も含めて作成。実際のイメージに近づけるために彩色したり人型を配置したりすることもあります。
スタディ模型
スタディ模型は建物の計画・設計段階で、建築事務所や設計事務所が図面の検証のために用いるものです。図面だけではわからない部分を、立体に起こすことでイメージしやすくなります。
外観のバランスを見たり、どのように採光したらよいかなどの検討に用いられたりするのです。クライアントに見せるものではないので、彩色などをしない白模型という簡易な形で作られることが多いとされています。
余談ですが、studyという響きから、専門学生が課題のために作らされる模型と勘違いする人もいますが、英語のstudyには「検証」という意味もあるので、そちらの意味で作られた模型ということです。ちなみに学生が作る模型は主にプレゼンテーション模型になります。
ランドスケープ模型
ランドスケープとは景観や風景、眺望など視覚的な環境を指す言葉です。模型においては、景観や眺望の地形を読み取り、考えながらデザインしていきます。樹木や水といった自然に関わる表現は、それぞれの形や色合いをどうするのかが重要です。
また、等高線を丹念に描き、立体的な空間認識を高めていかなければなりません。繊細な計算のもとで、風流な自然を表現しましょう。
ジオラマ模型
ジオラマとは展示物や周辺環境、背景を立体的に表現する方法です。よく博物館や展覧会などで展示されています。
ジオラマ模型のテーマとなる風景は、農家の建物と田園、駅舎と行き交う人々、賑やかなテーマパークなどさまざまで、ストーリー性を盛り込むことも可能です。LEDランプや調光器などを使用すれば、リアリティのある表現ができます。
ジオラマ模型はキットとして販売されていることも多く、ベースの板材の上に小さい模型を並べつつ、理想のイメージに近づけていきます。模型やそれを表現する方法が多種多様なので、制作の際は自分なりに自由にアレンジしてみましょう。
マンション模型
マンション模型とは、その名のとおりマンションやその周辺地域を模型にしたもので、住宅展示場・モデルルームなどに展示されています。ハウスメーカーが展開するモデルルームのマンション模型は、マンションや周囲の公園、ベンチ、花壇なども非常に精巧に作られています。
モデルルームの見せ方によって、模型のサイズを決めます。大規模物件になると、実物の1/40という比較的大きなサイズになることもあり、精巧に作る部分と、見学者に伝わりやすいようにある程度デフォルメしている部分を分けるのが上手く作るポイントです。
オフィス公共施設模型
オフィスや公共施設などの模型は、特定の施設の外観や具体的な内観などを作っています。オフィスや公共施設どちらでも間取りはもちろん、窓や駐車場、施設を支える柱、各スペースへの通路、インテリアなどを細かく作るのが特徴です。
建築家やデザイナーなどが自治体やメーカーから依頼を受けて、実際の建築の前に模型を作るのが一般的です。
あらかじめ模型を作ることで、建築計画等を詳細に打ち合わせできます。デザイナー側からすれば、模型作りによって、構想に説得力を持たせられるのも魅力です。
このように模型にはいくつか種類があり、ここまで代表的な4つの模型について紹介しました。自然環境の表現が重要なランドスケープ模型や、内観の様子を精巧に作る必要があるオフィス公共施設模型など、それぞれ異なった特徴があります。
趣味の方でも、仕事で模型を扱う方も、それぞれの特徴をあらかじめ理解してから模型作りを進めましょう。
建築模型を作る目的
建築模型を作る目的はさまざまです。目的によって用いられる模型も変わってきます。ここではそれぞれの目的と特徴について解説しましょう。
全体の土地の利用計画のため
建物だけでなく全体の土地をどのように利用するか計画・検討したり、全体のバランスを確認したりするために模型を作成することがあります。こういった目的には「敷地模型」や「都市模型」が用いられることが多いです。
「敷地模型」は建物を建てる土地全体に対しての建物のバランスや位置を検討するので、周辺の道路や土地の傾斜なども再現します。「都市模型」はより広範囲の街並みを再現した模型で、建物の設計だけにとどまらず街づくりのための作られた模型ということです。森ビルの制作した都市模型はとくに有名でしょう。
建物の形や容積のバランスを見るため
土地に対する建物の容積のバランスを確認したり、建物の見た目そのものを決めたりするために模型を作って検討します。このような目的では「ボリューム模型」「コンセプト模型」「全体模型」などを作成するのです。
建物の容積と土地とのバランスを見るときは「ボリューム模型」、建物の見た目やコンセプトを確認するには「コンセプト模型」を用います。「全体模型」では駐車場や庭の植栽なども再現できるのが特徴です。
建物の見え方や使用方法の確認
外から建物がどう見えるのかという確認をするためには「外装模型」「外構模型」を使います。「外装模型」は屋根や外装「外構模型」は門や玄関までのアプローチ、駐車場などの検討に使用。「平面模型」「断面模型」「内観模型」などは、建物の中の見え方や使用方法などの検討に用います。
設計内容の説明のため
設計内容の説明のために用いる模型もあります。「インテリア模型」では建物の中のインテリアまで作り込み、より空間的なイメージを明確にできるのです。マンションや特殊な器具や什器が置かれる店舗の説明などにも使われます。「部分詳細模型」では全体の模型ではわかりにくいところを細かく表現。建物の一部分を「実物大模型」で再現することもあります。
まとめ
建築模型の種類と作る目的について解説しました。建築模型は施主に建物の説明をするために用いるプレゼンテーション模型と、設計段階で図面ではわからない部分の検討をする際に用いるスタディ模型があります。
さらに、全体の土地利用の計画を立てる、土地に対する建物のバランスを見る、建物の見え方や使用方法について確認する、説明や展示のために用いる、などの目的別に適した模型も。
建築模型は図面だけではわからない部分を立体的なイメージにして、設計の助けにしたり、クライアントに説明したりする上で非常に有用です。建物を作る上でなくてはならないものということがわかるでしょう。